イタリア食文化を学ぶ書籍3選

イタリア食文化を学ぶ書籍3選など、3本立てです
マキタニ 2025.04.06
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こんにちは、マキタニです。

主に個人的な食事の話やサイゼリヤの最近の話題など飲食関連のトピックスを中心とした無料のニュースレターです。メールアドレスの登録で全文を読めます(過去記事も全文読めるようになり、新しい記事はメールでも配信されます)。

今回はこの3本です。

  • 最近のサイゼリヤ報告

  • イタリア食文化を学ぶ書籍3選

  • おまけの話

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最近のサイゼリヤ報告

前回のニュースレターから行ったサイゼリヤは1回。ランチ。店内は春休みモードで賑やか。

2月のグランドメニュー改定からだいぶ経ちましたが、「新しいメニューを一度試しますか」となんとなく思い立ち、東日本のみで提供されている「ポップコーンシュリンプとタラコのクリームグラタン」を食べてみようということに。

初めましての「ポップコーンシュリンプとタラコのクリームグラタン」。合わせたのは「柔らか青豆の温サラダ」と新「フォッカチオ」。

タラコ系統のドリアはずいぶん前からランチメニューなどで提供されていましたが(途中からグランドメニュー入り)、食指が動かず食べたことがありませんでした。

感想としては個人的好みではなかったです。残念。焼けたタラコソースの香りがちょっと苦手です。スパゲッティに合わせたものはウェルカムなのですけれど、焼くと独特な香りがして気になります。

もしミートソースのかかったグラタンが再登場すれば、案外好んで食べそうに思います(かつて1990年代末まで「ミラノ風グラタン」というメニューがありました)。

ごちそうさまでした。

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イタリア食文化を学ぶ書籍3選

2023年ぐらいからイタリアの食文化の勉強をしています。

いまや日本人はパスタやピザを日常的に食べるようになり、イタリア料理は比較的馴染みのあるものになりました。しかし、その料理がどの地方の料理なのか、なぜその食材や料理法なのか、地方の特色や歴史的経緯などをほとんど知りません。

日本で流通しているイタリア料理の一側面だけを捉えて、誤った理解をしている場合もあるかもしれません。一方で「サイゼリヤの料理は『イタリア料理』などではないのではないか」という議論を軽率に始めてしまったりするかもしれません(これに関しては私の答えは「サイゼリヤの料理はやはりイタリア料理である」なのですが、それはまたどこかで)。

食文化を学ぶといっても、レシピを集めて作ったりイタリア料理店に通っていろんな料理を食べるといったものではなく、書籍とインターネットを中心に座学でやっています。時間とお金に余裕があれば料理三昧やイタリア料理店通いをしたいところですが、そんな身分ではまだないので、現実的なところからのスタートです。

今日は、これまで読んだ書籍の中から、良かったものを3冊紹介してみます。

池上俊一 著『世界の食文化15 イタリア』

1冊目。池上俊一著『世界の食文化15 イタリア』(農文協 2003年)。

昨年読んだ本です。とても勉強になり、なんならそれまで勉強してきたものを一度リセットされて「振り出しに戻る感」すら感じた本です。

イタリア料理とはどのような定義がふさわしいのかを、歴史的背景を元に文化概念として考察した書籍です。イタリア料理を「現在のイタリアでイタリア人が食べているもの」でもなく、「普遍的な定義があって世界中のどこであれ誰であれその定義に沿って作ればイタリア料理になる」というものでもなく、いや両者を否定することなく、「なぜ現在の料理に至ったのか、なぜいま皆がそれを食べ、それをイタリア料理としているのか」を歴史的経緯をたどって読み解いていくという本です。

20年以上前の2003年に発行された書籍ということで、おそらくここからさらにアップデートすべき内容もきっとあると思うのですが、歴史や文化を踏まえていまイタリア料理がどの位置にいるのか、なぜその食材はそう使われているのかなど、腑に落ちるものは非常に多かったです。

マッシモ・モンタナーリ 著『イタリア料理のアイデンティティ』

2冊目、マッシモ・モンタナーリ著『イタリア料理のアイデンティティ』(河出書房新社 2017年)。

こちらはイタリア人の食文化の研究者による書籍です。先ほどの『世界の食文化15 イタリア』が日本人による書籍で、こちらはイタリア人による視点での書籍という感じで、同じく歴史をたどってイタリアの各地方の料理がどう形成されていったのかを紐解いた内容です。

『イタリア料理のアイデンティティ』と『世界の食文化15 イタリア』、ともに共有しているのは、「皆それぞれの土地の限られた条件と横のつながりで必死になって生きてきた結果の、その集合体」がいまのイタリア料理を形作っているということ。

書籍の内容もとても学びが多いのですが、翻訳された正戸氏による「あとがき」もとてもすばらしいです。日本でローカライズされて人気を博し独自に発展しているそれもイタリア料理の一つである、というメッセージだと受け止めています。

いま、日本でイタリア料理を振る舞うこだわりの個人店や高級店にも、グローバリズムとローカリズムの波が押し寄せている。修業先などイタリアのある土地に特化してそこで食べられる郷土料理をなるべくそのままの形で、またそれを日本人が食べやすいように、あるいは料理人の想像力を持って手を加えて提供している料理店は、このグローバル化の時代に日本でイタリアのローカルを表現している。また、シンプルな調味料や調理法で素材の持ち味を引き立てるイタリア料理の精神を取り入れながら、日本のもしくは料理店の地元の食材を想像力豊かに調理し、パスタやリゾットなどイタリアに特徴的な料理を献立に組み込んで提供する料理店もある。ときに、一見すぐにはイタリアに結びつかないようなそんな料理のどこがイタリア料理なのかという意見に触れることもあるが、イタリアの精神と日本のローカリズムを組み合わせたこの時代のイタリア料理としてくみ取ることもできるだろう。
『イタリア料理のアイデンティティ』の正戸氏によるあとがき

柴田書店 編集『イタリアの地方料理』

3冊目、安定の柴田書店さん編集の『イタリアの地方料理』(柴田書店 2011年)。大型本です。

イタリア20州の地方料理を解説しつつ、その中の代表的な料理のレシピも掲載した書籍。レシピは日本の26名の著名シェフによるもの。イタリアの各州の郷土料理の特徴を学べ、おいしそうな料理写真もカラーで楽しめてレシピの概略もわかるという、贅沢な本です。

イタリアは地方ごとに料理は大きく異なるのですが、州ごとにまとめられているのでそれがよくわかる書籍です。また同じ料理名でも地方でまったく異なる食材を使うといったこともわかる(例えば片や肉料理なのに片や魚料理など)、そういった本です。

おそらく料理に携わるプロ向けの書籍なのだと思いますが、イタリアの食文化の理解に役立つ内容でした。最初の取っかかりにも良さそうです。

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おまけの話

個人的な「月イチで良さげなイタリアンのランチに行く会」のソロ活。先日、事務所ご近所さんのイタリア料理店へ。

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